1. Google Meetの議事録をGeminiでどう料理すべきか
「Google Meetの自動要約、そのまま上司に出せますか?」
多くのビジネスパーソンが、この問いに「No」と答えるはずです。
確かに、Google Meetの自動文字起こしや要約機能は優秀です。
誰が何を言ったか、事実はある程度正確に拾ってくれます。
しかし、営業やビジネスの現場で本当に必要なのは、「平等な事実の羅列」ではありません。
- 上司が知りたいのは「で、受注できそうなの?リスクはあるの?」という見通し。
- 顧客が欲しいのは「私の課題を理解してくれたか?」という安心感と、明確なネクストアクション。
Meetが作ってくれるのはあくまで「素材(ログ)」です。
それを「成果物(ドキュメント)」へと料理するのは、まだ人間の仕事として残っています。
今回紹介するのは、この「最後の料理」すらもGeminiに任せる方法です。
単なる要約ではなく、あなたの代わりに「商談の裏側」を読み解き、上長への報告・顧客へのメール・次回の戦略までを一撃で出力する「最強の営業秘書」の作り方を解説します。
2. ステップ1 素材(ログ)の確保は「Google純正」でいい
まず、入り口となる「録音・文字起こし」についてです。
結論から言うと、高価なサードパーティ製ツールはもう必須ではありません。
Geminiが音声ファイルを直接理解できるようになった今、「何らかの音声ファイルさえあればいい」からです。
※利用プランや環境、ファイルサイズにも依存しますので、Google ドライブにアップロードして、後述するGeminiではそれらを参照する形で進めてみてください。
パターンA:オンライン会議(Google Meet)
Google Workspaceユーザーなら、Meetの「文字起こし」機能をONにするだけです。
会議終了後、Googleドライブにドキュメントとしてログが保存されますので、音声データを以降で取り扱う必要もなくなります。
手法としては最強の形です。
パターンB:対面会議(スマホ録音)
対面時にGoogle Meetを開けない場合は、スマホで録音しましょう。
- Android/Pixelユーザー:純正の「レコーダー」アプリが最強です。
- iPhoneユーザー:標準のボイスメモで十分です。
「誰が話しているか(話者分離)」が完璧でなくても問題ありません。
後のステップでGeminiが文脈から「誰が客で、誰が営業か」を推測して補正してくれます。
3. ステップ2 「最強の営業秘書」をGemsで作る
ここが今回の核心です。
毎回「この議事録をまとめて」とプロンプトを入力するのは非効率です。
Geminiの「Gem(ジェム)」機能を使って、あなた専用の営業秘書AIを定義しましょう。
以下のカスタム指示をコピーして、新しいGemを作成してみましょう。
💎 コピペ用:営業秘書Gemのレシピ
✅ Gemの名前
営業成果最大化Bot
📌 カスタム指示
あなたはBtoBセールスのエキスパートであり、私の優秀な営業秘書です。
渡された「商談の文字起こしデータ(または音声)」をもとに、以下の3つのセクションに分けて成果物を作成してください。
### 前提条件
* 「平等な要約」は不要です。営業成果(受注)に繋がる情報を抽出してください。
* 各セクションは `---` (水平線) で明確に区切り、コピペしやすくしてください。
---
### セクション1:【社内報告用】
上司やチームへの報告用です。事実と推測を分けて、簡潔に記載してください。
* **商談概要:** 3行で要約
* **BANT情報:**
* **Budget (予算):** 金額感、確保状況(不明なら推測または「要確認」)
* **Authority (決裁権):** 誰がキーマンか
* **Needs (ニーズ):** 顧客の「痛み」と「理想の状態」
* **Timeframe (時期):** 導入時期、次回マイルストーン
* **懸念・リスク:** 顧客が示した難色、競合の影、失注リスク(辛口でOK)
* **ネクストアクション:** こちらがやるべきこと
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### セクション2:【顧客送付用・御礼メールドラフト】
そのままGmailに貼り付けて送信できるレベルの丁寧なビジネスメールを作成してください。
* **件名:** 具体的かつ魅力的に(例:本日の御礼と〇〇に関する次回のご提案について)
* **本文:**
* 本日の感謝
* **決定事項の確認:** 合意した内容の再確認(箇条書き)
* **宿題・次回アクション:** 誰がいつまでに何をするか明確に
* 次回日程の候補提示(もし会話になければ「別途調整」とする)
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### セクション3:【戦略壁打ちコーチング】
この商談を成約させるための、あなた(AI)からの客観的なアドバイス。
* 「今日の商談で良かった点」
* 「もっと深掘りすべきだった点(ツッコミ)」
* 「次回の提案で刺さりそうなキラーフレーズ案」

4. ステップ3 実演。泥臭い商談が一撃で「成果物」に
では、実際にこのGemがどう機能するか見てみましょう。
ある「価格交渉で難航した、少し泥臭い商談」のログを食わせてみました。
👉 Input(商談の断片)
顧客(部長): 「うーん、まあ便利そうなのは分かるけどさ、月10万でしょ? 競合のA社さんは月5万って言ってたよ? 倍の価値あるの?」
営業: 「あ、A社さんですね。確かに価格はお安いですが、あちらはLINE連携がオプションでして…」
顧客(部長): 「でもさ、結局使いこなせなかったら意味ないじゃない。ウチの採用チーム、IT苦手な人多いし…」
これに対して、Geminiが出力した結果がこちらです。
📌 Output(Geminiの仕事)
**【セクション1:社内報告用】**
- **BANT情報(Budget):** 厳しめ。月10万に難色。競合(5万)がベンチマークになっている。
- **懸念・リスク:** 競合A社との価格差(倍額)の正当性を部長が腹落ちしていない。「IT苦手」による定着化への不安。
- **ネクストアクション:** 至急、LINE連携を含めたトータルコスト比較表を作成し送付する。
**【セクション2:顧客送付用・御礼メールドラフト】**
- **件名:** 【比較資料の送付】「Saiyo-DX」ご提案の御礼と導入サポートについて
- **本文:** (抜粋)「…鈴木様が抱えられている日程調整業務の負荷軽減について、弊社のシステムがお役に立てるイメージをお持ちいただけたようで幸いです。ご懸念の『導入サポート体制』について詳細資料を添付いたします…」
**【セクション3:戦略壁打ちコーチング】**
- **もっと深掘りすべきだった点:** 「A社は5万」と言われた時、単に「LINEがオプション」だけでなく、具体的に「オプション込みで幾らになるのか」までその場で計算して提示すべきでした。
- **キラーフレーズ案:** 「月額の差額5万円は、担当者様の残業時間削減分だけですぐにペイできます」
5. NotebookLMとの使い分けと人間チェックの重要性
いかがでしたか?
Geminiに、ログを投げ込んだだけで、社内向け、顧客向け、そして自身の振り返りが一瞬で完了することがお分かりいただけたかと思います。
さて、ここまでGemini(Gems)の活用法をお伝えしましたが、読者の中には「NotebookLMとはどう使い分ければいいの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
結論から言うと、Geminiは「作業場」であり、NotebookLMは「図書館」です。
Geminiは「今、目の前にある素材」を料理して、メールや報告書などの成果物を作る(=作業する)のが得意です。
一方でNotebookLMは、過去の膨大な会議ログや資料を保管し、必要な時に参照する(=図書館で調べる)のに適しています。
以下の表を参考に、目的に応じて使い分けてみてください。
| 特徴 | NotebookLM | Gemini (Web / Docs) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 「図書館」 (保管・参照) | 「作業場」 (加工・生成) |
| 得意な時間軸 | 過去〜現在 (「あの時なんて言ってたっけ?」) | 現在〜未来 (「これから誰に何を送る?」) |
| 入力データ | 複数の会議、資料、PDFなど (面での理解) | 今回の会議ログ + 指示 (点での突破) |
| アウトプット | 正確な引用に基づく回答、要約 | メール下書き、提案書骨子、壁打ち |
| Meet連携後の アクション例 | 「今月の定例会議4回分を読み込ませて、進捗の遅れ傾向を分析する」 | 「さっきの会議ログを元に、部長への報告メールを書いて」 |
「今日の仕事を終わらせる」ならGemini、「長期的なインサイトを得る」ならNotebookLM。
この使い分けが、AI活用の最適解です。
最後に、ひとつだけ「これだけは絶対に守ってほしいルール」があります。
それは、「数字と決定事項」の目視チェックです。
「ハルシネーション(AIの嘘)」という言葉は聞き飽きたかもしれませんが、営業の現場で起きるハルシネーションは、笑い話では済みません。
【実際に見られたヒヤリハット事例】
- 人間「定価は10万円ですが、今回は初月無料キャンペーンが適用できるか確認します」
- AI「初期費用は無料で、月額も初月は無料にて合意しました」
⚠️ リスク
ニュアンスを飛ばして「二重の無料」を勝手に約束していた…
- 人間「来週の火曜か水曜あたりで…」
- AI「次回ミーティング:11月14日(火)14:00〜」
⚠️ リスク
誰も言っていない時間を勝手に指定していた…
Geminiが作ったまとめは、あくまで「90点の下書き」です。
「最後の10点(責任)」は、引き続き人間が担うようにしましょう。
6. まとめ これは「議事録」だけの話ではありません
今回ご紹介したテクニックは、単なる「時短」に見えるかもしれません。
しかし、本質は少し違います。
AIが「励ましの言葉(お疲れ様でした)」をかけ、「上司への言い訳」を考え、「お客様への気遣い」まで生成できることに注目してください。
これはもう、ツールというより「優秀な新人アシスタント」に近い業務内容です。
今、Googleは「Google Workspace Flows」と呼ばれる、これらの作業を全自動で繋ぐ機能を準備しています。
一般的にAIエージェントと呼ばれる仕組みの1つです。
今日あなたが作った「営業秘書Gem」のプロンプトは、その全自動化システムにおける1つの業務ブロックになります。
商談ログがGoogleドライブに保存された瞬間、今回のGemが動き出し、上司への報告、顧客へのメール下書き、そして自身のToDoリスト作成までが全自動で行われる世界がまもなく訪れます。
そんな世界が訪れる直前である今のうちに、あなたの「営業の型」をAIに教えておきましょう。
そうすれば、来たる未来、あなたは本当に「承認ボタン」を押すだけで仕事が終わるようになるはずです。
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