1. イントロ —— AIが「人の中の構造」を読む時代へ
営業の1on1は、これまで「評価のための面談」として扱われることが多くありました。
しかし本来の1on1は、メンバーが自分の思考や行動を整理し、学びを深めるための学習の場です。
そして今、その学びの構造をAIが読み取れるようになりました。
たとえばGoogle Meetで行った1on1をGeminiが自動で文字起こしし、誰が何を話し、どんな反応があったかを「行動」「反応」「心理」といった単位で整理してくれる。
AIが対話ログを構造化できるようになった今、その記録は「振り返り用メモ」から「人の成長を可視化するデータ資産」へと変わります。
どんな行動が成果につながったのか。
どの局面で迷いや停滞があったのか。
AIは、こうした変化のパターンを読み取り、次の1on1のテーマ設定や育成方針にまで活かすことができます。
つまりAIは、単なる要約ツールではなく、学習を設計するパートナーとして機能する段階に入ったのです。
では、AIが人の中の構造を正しく読み取り、成長の文脈として再現できるようにするには、どのような仕組みや設計が必要なのでしょうか。
AIの構造設計次第で、チームの学びの質も大きく差がつく。
今回の記事では、その基盤となる1on1ログの取得から分析までの実践法を解説していきます。
2. Meet or ドキュメント —— ログ取得の最適解
AIに1on1の内容を正確に読み取らせるうえで、もっとも重要なのは「ログの質」です。
つまり、どのように音声や発言を記録するかによって、分析の精度が大きく変わります。
その点で、Google Workspace(Business Standard以上)を利用中であれば、Google Meetの録画機能が現時点での最適解となります。
| 機能 | 🥇 Meet(推奨) | 🥈 ドキュメント(次善) |
|---|---|---|
| 推奨ケース | オンライン1on1 | 対面1on1 |
| 話者分離 | ◎(誰の発話か識別可能) | ×(全発話が混在) |
| ログ品質 | 高 | 中 |
| 手軽さ | ○(録画をONにするだけ) | ◎(その場で記録可) |
Meetで記録されたログは、発話者ごとに(話者分離)時系列で整理されるため、Geminiが「行動」「反応」「心理」を正確に分離できます。
マネージャーが「どの質問にどんな反応をしたか」を振り返る際にも、構造が明確で、分析効率が圧倒的に高まります。
Meetが使える環境であれば、オンラインでも対面・オフラインでも、まずは優先的に活用しましょう。
対面でも、PCを間に置いてMeetを起動し、文字起こし機能だけを利用するだけで、Geminiが文字起こしと要約を実施してくれます。
一方、オフラインでの1on1や、すぐに記録を残したいケースでは、Google ドキュメントでの同時記録も有効です。
ドキュメント上でメモを取りながら、会話の要点を「発言者名:内容」という形式で残すだけでも、Geminiは十分に構造を認識できます。
結論
精度を重視するならMeet。スピードと手軽さを優先するならドキュメント。
どちらもドライブ直結でGeminiが即参照できるため、現場の環境に合わせて柔軟に選択できます。
3. 1on1ログの分析設計 —— 一次分析と二次分析の二段階アプローチ
AIに1on1を「読ませる」だけでは、表面的な要約に留まってしまいます。
本当に意味のある学びを得るには、AIと人の役割を分けた二段階設計が欠かせません。
ここで言う二段階とは、
1️⃣ AIがログを構造化する「一次分析」
2️⃣ マネージャーがAIと対話しながら洞察を引き出す「二次分析」
のことです。
この2ステップを明確に設計することで、1on1ログは過去の記録から未来を導くデータへと変わります。
🔹 一次分析(構造化)—— ログを「AIが理解できる型」に整える
一次分析では、GeminiがMeetやドキュメントで取得した文字起こしデータをもとに、1on1を業務フェーズごとに分解し、行動・反応・心理を整理します。
📌 業務フェーズ分類例
フェーズ例:
- Lead(アポ・リード接触)
- Preparation(資料・提案準備)
- Presentation(商談・プレゼン)
- Closing(交渉・クロージング)
- CustomerSuccess(フォロー・既存対応)
それぞれのフェーズごとに、Geminiは以下のような要素を単一のドキュメントにMarkdown形式で出力します。
📌 マークダウン出力例
## [Presentation] 提案・商談フェーズ
- 行動:具体的な発言・提案内容
- 反応:相手の理解・共感・迷い
- Insight:AIが捉えた文脈上の意味や気づき
- 次の一手:次回アクションの提案
この「構造化」工程によって、1on1ログは単なる文章データではなく、再利用可能な学習データベースとして整備されます。
🔹 二次分析(洞察)—— AIと対話しながら「成長を読み解く」
一次分析で整ったログをもとに、マネージャーはGeminiと対話を行います。
この段階で重要なのは、AIを使って考えることです。
たとえば、以下のようなプロンプトを投げかけることで、AIが複数回の1on1から成長の傾向や変化を抽出します。
📌 プロンプト例
過去3回分のCloseフェーズを比較して、
- 行動パターンの変化
- メンバーの心理的変化
- 次に意識すべきテーマ
を3行でまとめてください。
ここで得られるのは「評価」ではなく、成長の文脈です。
AIは、データの中に潜む変化の兆しを見つけ、マネージャーが次の対話テーマを設計するための材料を提供してくれます。
一次分析で構造を整え、二次分析で洞察を引き出す。
この流れを定着させることで、1on1は単なる振り返りの時間から、「AIと共に人を育てる学習サイクル」へと変わっていきます。
4. Workspace構造と自動分類フロー —— ログを育成データとして整える
1on1のログを資産化するうえで欠かせないのが、Google ドライブ上の構造設計です。
AIにとって「どのファイルが、誰の、どの時期のデータなのか」が明確であるほど、分析の再現性が高まります。
たとえば、以下のような人単位×期間単位のフォルダ構造を整えることで、Geminiが特定のメンバーの成長を時系列で読み取りやすくなります。
📌 フォルダ構造例
📁 Sales_Development
└── 📂 Yamada_2025Q2
├── 1on1_20250520_raw.md
└── 1on1_20250520_structured.md
raw.mdはMeetまたはドキュメントから取得した生ログ、structured.mdはGeminiによる一次分析で自動生成されるフェーズ別構造化ログです。
🔹 Geminiに渡す一次分析プロンプト例
Geminiは生ログをこの構造に合わせて分解し、Markdown形式で整形します。
以下のようなプロンプトを使うと、最小限の手動操作でフェーズ分類と要約を実行できます。
📌 プロンプト例
この1on1ログを以下のフェーズに分類し、各フェーズごとに「行動/反応/Insight/次の一手」でまとめ、単一のドキュメントにMarkdown形式で出力してください。
- Lead(アポ・リード接触)
- Preparation(資料・提案準備)
- Presentation(商談・プレゼン)
- Closing(クロージング・交渉)
- CustomerSuccess(既存対応・フォロー)
出力されたMarkdownをドライブに保存するだけで、「フェーズ別の再現性ある成長ログ」として蓄積されていきます。
🔹 自動分類フローの考え方
- Meetまたはドキュメントで1on1を実施→ログをドライブに保存
- Geminiが一次分析プロンプトを実行(マイ Gem/手動実行)
- ドライブ内で過去ログを横断検索・比較分析可能に
この一連の流れを定着させることで、各メンバーの「行動・反応・心理」の変化を時系列で追えるようになります。
AIは人の成長の断片を拾い、構造的に並べ替えることが得意です。
そのため、記録フォーマットを固定化しておくことで、AIが文脈を理解する精度が劇的に高まるのです。
5. 分析の実行方法 —— 「マイ Gem」で半自動化
1on1ログを構造化したら、次はそれをどのように分析運用へ乗せるかです。
ここでは、現場導入のハードルを考慮して、Geminiの「マイ Gem」を活用した半自動化のパターンを紹介します。
🥇 マイ Gemで半自動化
マイ Gem(Gemini Advancedのカスタム指示)には、セクション4で紹介したプロンプトを「テンプレート」として登録します。
これにより、マネージャーはログを読み込ませた後、ワンクリックで定型的な一次分析(構造化)を実行できます。
📌 myGem設定例
あなたは、営業マネージャーの優秀なアシスタントです。
提供された1on1の文字起こしログ(rawデータ)を分析し、以下のタスクを実行してください。
# タスク
1. ログ全体を読み、以下の営業行動フェーズに分類します。
2. 各フェーズについて、「行動」「反応」「Insight」「次の一手」の4つの観点で要点を抽出・要約します。
3. すべての分析結果を、単一のMarkdown形式で出力します。
# 営業行動フェーズ
- Lead(アポ・リード接触)
- Preparation(資料・提案準備)
- Presentation(商談・プレゼン)
- Closing(クロージング・交渉)
- CustomerSuccess(既存対応・フォロー)
- その他(キャリア・雑談など)
# 出力形式 (Markdown)
## [Lead]
- 行動:
- 反応:
- Insight:
- 次の一手:
## [Preparation]
- 行動:
- 反応:
- Insight:
- 次の一手:
(以下、検出された全フェーズを同様に出力)
📌 マイ Gem(半自動)の利用フロー
マイ Gemを使ったフローは、Web版Geminiか、ドキュメントのサイドバーかで若干異なります。
1. Web版Gemini(gemini.google.com)で実行する場合
- Gemini(Web版)を開く
- +ボタン(ファイルのアップロード)またはGoogle Workspace連携で該当のraw.mdファイルを指定
- 続けて保存済みのマイ Gemを呼び出して実行
- 1on1_20250520_structured.mdのようなファイル名でドライブに保存
2. Google ドキュメントのGeminiサイドバーで実行する場合
- Meetのログから自動生成されたGoogle Docファイルを開く
- Geminiサイドバーを開き保存済みのマイ Gemを呼び出して実行
- Geminiがサイドバーに分析結果を出力
- 結果をコピーし、1on1_20250520_structured.mdのようなファイル名でドライブに保存
このフローにより、プロンプトを毎回コピペする手間が省け、分析の「型」がチーム全体で標準化されます。
6. フィードバックテンプレートと二次分析プロンプト —— AIと共に成長を読み解く
一次分析でGeminiが1on1ログを構造化したら、次は「そのデータをどう読むか」の段階です。
ここで重要になるのが、人の問いがAIの思考を導くという発想。
マネージャーの質問設計ひとつで、AIが見つけ出す成長の方向性はまったく変わります。
以下では、実際のフィードバックテンプレートと、洞察を深めるためのプロンプト例を紹介します。
🔹 一次出力の標準テンプレート(Markdown)
マイ Gemの構造化出力を踏まえ、最終的なログは以下のような形になります。
このフォーマットがそろっていれば、Geminiは過去ログを比較しやすく、成長傾向を抽出しやすくなります。
📌 要約例
# 1on1ログ要約(2025/05/20)
## [Lead] 新規アプローチ
- 行動:新規リード獲得に向けた電話・メールを3件実施。
- 反応:1件で好感触あり、残りは検討中。
- Insight:初期接触での質問精度が向上。
- 次の一手:スクリプト改善と再接触タイミングの調整。
## [Preparation] 提案準備
- 行動:提案資料の更新、価格構成の見直し。
- 反応:上長コメントで差別化ポイントの強化を指摘。
- Insight:情報整理力が安定してきた。
- 次の一手:顧客課題別の資料テンプレ化を検討。
このようにMarkdownで統一することで、Geminiは文脈をブロック単位で認識し、「前回のLeadフェーズと比較してどう変化したか」を瞬時に解析できます。
🔹 二次分析プロンプト例 —— 問いがAIを導く
1on1の質を高めるのは、AIの性能ではなく、人の問いの質です。
以下のようなプロンプトを活用することで、単なる要約ではなく、成長の解釈をAIから引き出せます。
📌 比較・傾向分析系
以下の3回分の1on1ログ(Leadフェーズ)を比較し、
- 行動パターンの変化
- メンバーの心理的変化
- 成長の方向性
を3行でまとめてください。
📌 フィードバック設計系
この1on1ログをもとに、次回の1on1で確認すべき質問を5つ提案してください。
目的は「本人の自律的な気づきを促す」ことです。
📌 チーム横断洞察系
過去1ヶ月分の全メンバーの1on1ログから、共通して見られる課題や停滞フェーズを3つ抽出してください。
これらはすべて、既存の構造化ログ(Markdown)を直接読み込ませるだけで機能します。
複数ファイルを扱う場合も、Geminiはドライブ上のファイルパスを参照できるため、「人×フェーズ×時系列」で横断的な比較が可能です。
🔹 フィードバック文化を定着させるポイント
AIが優秀でも、問いが定まっていなければ学びは進みません。
したがって、現場での定着には以下の3ステップを推奨します。
- 記録の型をそろえる(マイ Gemテンプレの統一)
- 分析の問いを共通化する(定例のプロンプトを共有)
- AIの出力を会話に戻す(人が読み、人に返す)
こうしてAIが構造を整え、人が意図を読み解く循環が生まれたとき、1on1は「管理の時間」から「学びの時間」へと変わります。
💬 7. まとめ —— AIが読む「人の成長構造」をチームに根づかせる
AI時代の1on1で求められるのは、分析の精度ではなく、成長の構造を見抜く習慣です。
Meetで記録し、Geminiで構造化し、問いを通じて学びを深める。
この一連の流れを日常に落とし込めたチームこそ、AIを育成の伴走者として活かせます。
💬 最終チェック
以下のチェックリストを、あなたの1on1ログ分析の起点として確認してみてください。
- ☐ Meetまたはドキュメントで1on1の文字起こしログを残し、話者分離や要点を正確に記録できているか?
- ☐ ドライブ上に「人単位×期間単位」のフォルダ構造を整え、AIが時系列で学習ログを追える状態にしたか?
- ☐ マイ Gemに一次分析(構造化)プロンプトを登録し、チーム全員が同じテンプレートで分析できるようにしたか?
- ☐ Geminiで複数回の1on1を比較し、行動・反応・心理の変化を成長文脈として読み取らせているか?
- ☐ AIの分析結果をそのまま終わらせず、人の問い(フィードバック設計)によって次の1on1テーマへ還元しているか?
これらが整えば、あなたのチームはすでに「AIと共に人の成長構造を読み解く組織」へと進化しています。
🧩 3秒まとめ
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 思想 | 1on1は評価ではなく学習の場。AIが人の中の構造を読み、成長の文脈を可視化する。 |
| 実務 | Meet/ドキュメントでログを取得し、マイ Gemで構造化。Markdownテンプレで統一し、過去ログを比較分析する。 |
| 行動 | まずは1回分の1on1ログをGeminiに読み込ませ、行動・反応・心理の流れを可視化してみる。 |
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