検索の「主役」が急激に変わり始めている今だから生まれた規格
検索という手法を世に広め、長く覇権を握ってきたGoogleによるWeb検索が大きく変わろうとしています。
先日の週間AIトピックスでも触れましたが、若年層の約3割が生成AIを活用し、そのうち約半数がAIだけで意思決定を完結させるなど、「ググる」に変わって「AIに聞く」という検索行動が急速に広がっています。
自身でキーワードを類推し、組み合わせ、目的と合致する情報を見つける時代から、AIに何かを調べてもらったり、情報を要約してもらうという、検索以降の対話の時代に、スタイルが変わりつつあるのです。
検索エンジンとユーザーに見つけてもらい満足してもらうためことを主目的としていたWebサイトの役割もまた、AIに見つけてもらいスムーズに要約してもらうために、新たな取り組みが必要になってきています。
今回紹介する「llms.txt(エルエルエムエス.テキスト)」は、そんなAIとWebサイトの橋渡しを、今後担うかもしれない新たな規格の1つです。
1.はじめに知っておきたいllms.txtに関する注意点
llms.txtは、AI検索における優位性(インデックスや上位表示など)を何ら担保しません。
AIが積極的に読むかどうかも正直なところ定かではなく、詳細は後述しますが、LLM各社によって対応や判断には違いがあります。
しかしながら、多くの企業が今llms.txtの準備や設置を進めています。
理由は、WebサイトのHTMLやCSS、JavaScriptが、AIが情報を収集するうえで、非常に非効率な構造であり、現状の規格では、LLMがWebサイトの情報をどのように取り扱うべきなのか定義がしづらいためです。
後述するrobots.txtやhtaccessによる定義でも、Webサイトの情報をAIが収集すべきか否かは定義が可能です。
ですが、収集した情報をトレーニングデータに活用するか、出典を明記すべきかといったAI向けの定義を、robots.txtやhtaccessでは細かく行うことが出来ません。
llms.txtは、あくまで主要LLMに対して、Webサイトの情報をどのように取り扱ってほしいか、そしてWebサイトの概要はどのようなものかを、分かりやすく伝えるためのものです。
2.そもそもllms.txtとは何なのか?
llms.txtは、「llmstxt.org」というJeremy Howard(ジェレミー・ハワード)氏を中心とした非営利の技術イニシアチブが提唱した仕様です。
Jeremy氏は、機械学習教育プログラム「fast.ai」の共同創設者として知られ、Hugging FaceやOpenAIとの関わりも深い、実践志向のAI研究者・教育者です。
近年はAI倫理やアクセシビリティの分野でも積極的に発言を続けており、「AIが何を学び、どう振る舞うか」を制御する枠組みの必要性を訴えています。

参考情報:llmstxt.org
このプロジェクトの理念はシンプルで、「AIに読ませる/読ませたくないという意図を、より人間的な言葉で示せる環境をつくる」ことにあります。
従来のWeb規格は「人間に読ませるかどうか」や「検索エンジンにクロールさせるかどうか」に最適化されてきましたが、生成AIの台頭により、「一次読者がAIである」ケースが急増しています。
そのなかで、「この情報は引用してもよい」「この用途には使わないでほしい」といった意思を、AIクローラーに対して示すための交通整理表として生まれたのがllms.txtなのです。
現時点でのllms.txtは、W3Cなどの公式な標準規格ではありません。
ですが、このような理念と現場感のある声に後押しされ、多くの企業や開発者が自発的に導入を進めている現状があります。
つまり、llms.txtには「読み込ませたい」と「守りたい」という相反する概念が、自由に記述されているという点に留意しましょう。
2-1. 従来のrobots.txtとの違い
本セクションでは、まず「守りたい」という視座に立脚して、従来の手段とllms.txtの比較を行います。
Webサイトの情報収集を制御する手段として、長年使われた代表的なツールはrobots.txtや.htaccessでしょう。
llms.txtもrobots.txtも、基本的に対象となるドメインのルート直下に配置するテキストファイルです。
特にrobots.txtは、検索エンジンのクローラー(GooglebotやBingbotなど)に対して「ここは見ないで」「このディレクトリはOK」といったルールを、テキストファイル1つで指定できる便利な仕組みとして広く利用されています。
非エンジニアでも、CMSの管理画面や専用ツールを使えば比較的簡単に設置・編集できることもあり、WebマーケティングやWeb制作の現場では馴染み深い存在です。
しかし、生成AI時代においては、これだけでは不十分な場面が増えてきました。
2-2. robots.txtは「読む・読まない」の定義に特化している
robots.txtの本質は、あくまで「クロールするかどうか」のルールを示すだけです。
つまり「見に来ていい/ダメ」の区別はつけられても、見に来たあと「どう扱うか」までは決められないのです。
たとえば昨今のAIクローラー向けに必要と思われる以下のような要望は、従来のrobots.txtでは表現しきれません。
- このページの内容はAIに読まれても構わないが、学習用途には使わないでほしい
- サイトの概要やライセンスを、AI向けに明示的に伝えたい
こうした生成AIならではの意思表示を行うには、より詳細で柔軟な記述ができる仕組みが必要になります。
2-3. 実際には「従うかどうか」はクローラー次第
robots.txtやllms.txtのようなテキストファイルは、あくまで「お願いベース」のルールであり、強制・拘束力があるわけではありません。
つまり、Webサイトが「このクローラーは禁止」と記載していても、それに従うかどうかはクローラー側の裁量に委ねられているのが実情です。
この点を裏付けるように、近年では以下のような事案も報告されています。
✅ SourceHutのサーバーに対する過剰アクセス(2025年3月)
Gitホスティングサービス「SourceHut」は、AIクローラーがrobots.txtの指示を無視してGitデータを大量にクロールし、サーバーの負荷や通信コストが急増したことを公表。
意図しない学習利用と帯域消費の双方に問題提起しました。
参考情報:GadgetGate『AI用クローラーがrobots.txtを無視しトラフィックを圧迫していると開発者が主張』
✅ Reddit vs Anthropicの訴訟(2025年6月)
Redditは、生成AI「Claude」の学習に自社投稿データを無断使用されたとしてAnthropicを提訴。
訴状では、robots.txtや利用規約を無視して大量にデータを取得していたと主張し、AI業界の「善意」を装ったデータ利用に警鐘を鳴らしています。
参考情報:Ledge.ai『Reddit「AnthropicはAI業界の“ホワイトナイト気取り”」と非難──Claudeに無断スクレイピング使用の疑い』
このように、いくらrobots.txtでブロックをかけても、悪意または無頓着なクローラーによって突破されるリスクは常に存在します。
そのため、robots.txtやllms.txtの設置は『最低限の意思表示』ではあるものの、決して万能な防御策ではないという点を理解したうえで、運用上の対策を講じる必要があります。
2-4. Apacheサーバーの.htaccessとの違い
robots.txtやllms.txtが「お願いベース」のソフトな制御手段であるのに対し、Apacheサーバーで使われる.htaccessは、より強い制御が可能なサーバー設定ファイルです。
たとえば以下のようなことが可能です。
- 特定のIPやUser-Agentからのアクセスを強制的に拒否
- 一定の条件を満たしたリクエストにエラーページを返す
- 特定ディレクトリ以下のファイルを直接閲覧禁止にする
つまり、物理的に通さない「防壁」として機能するのが.htaccessです。
ただしその反面、以下のような注意点もあります。
- Apache限定の機能であり、すべてのWebサーバーに対応しているわけではない
- サーバーの仕様やセキュリティ設定によっては使用できないこともある
- 非エンジニアにはやや扱いが難しい
また、クローラー側がUser-Agentを偽装してきた場合など、完全な防御にはならないケースもあります。
エンジニア界隈では、さらなる防壁を構築する手法(例:CloudflareのAI Labyrinthなど)も着目されていますが、営業・マーケティング従事者の観点からは、.htaccessは「本気で防ぎたいとき」の手段ではあるが万能ではないという視点を持ったうえで、robots.txtやllms.txtと組み合わせるのが現実的な選択肢となります。
2-5. Webコンテンツを守る3つの照合ファイルの比較表
ここまで見てきたように、Webコンテンツの保護や制御には複数のアプローチがあります。
特に「AI時代のWeb施策」という観点からは、以下の3つの仕組みを理解し、それぞれの特性を活かすことが重要です。
種別 | 主な目的 | ターゲット | 制御内容 | 拘束力 | 導入のしやすさ |
---|---|---|---|---|---|
llms.txt | AIに「どう扱ってほしいか」を伝える | 主に生成AIクローラー | 学習の可否、引用可否、出典記載など | 任意(非公式仕様) | 非常に簡単(テキスト設置) |
robots.txt | クローラーに見せる/見せないを伝える | 検索エンジン/AI全般 | クロールの可否 | 任意(慣習的) | 簡単(CMS対応多数) |
.htaccess | 強制的にアクセス制御を行う | あらゆるアクセス元 | アクセス拒否、閲覧制限など | 強制可能(Apache) | 難しい(サーバー知識必要) |
✅ それぞれの補完関係を理解する
- llms.txtは、AI時代における新しい意思表示の手段であり、従来のクローラー制御ではカバーしきれなかった『どう使われたいか』の視点に対応します。
- robots.txtは、AIを含むクローラーに『来てほしい/ほしくない』を伝えるための入り口制御として有効です。
- .htaccessは、技術的にアクセスをブロックする最後の砦として機能します(ただし、Apache限定かつ設置には注意が必要です)。
これらを組み合わせることで、意図を伝える(llms.txt)→動作を制限する(robots.txt)→物理的に守る(.htaccess)という3層構造のアプローチが可能になります。
3.llms.txtの構文と書き方
llms.txtの目的は、本来「AIにどう使ってほしいかを人間の言葉で伝える」ための枠組みにあります。
つまり、クローラーを制限するためのツールというよりも、「AIに対して、自分たちの意図を明示的に伝えるためのラベリングフォーマット」と捉えるほうが、llmstxt.orgの本来の理念には近いでしょう。
とはいえ、現実のWeb運用では「AIに学習させたくない」「特定のAIにだけ読んでほしい」といったニーズも多く、結果としてrobots.txtの機能を『補完する形』での活用が広がっています。
本セクションでは、そうした現場の実情を踏まえつつ、llms.txtでどこまでの意図を伝えられるのか、実際の構文や書き方のポイントを紹介します。
3-1. 最小構成でllms.txtを書いてみよう
まずは、AIクローラーに対して「このサイトはAI利用をある程度許可している」という意図を明示するllms.txtの最小構成例を見てみましょう。
# llms.txt for AI Alright
## site-name: AI Alright(オールライト)
## site-url: https://www.ai-alright.com/
## language: ja
## license: CC BY-NC 4.0
## llms-guidance: 本メディアの記事は非営利目的での引用・要約・埋め込みに限り、言語モデルによる利用を許可します。
この例は、いわば「自己紹介+ポリシー通知」のような位置づけです。
実際にこのような形でllms.txtを設置している事例も増えてきており、AIフレンドリーなWebサイトの第一歩として機能します。
✅ 代表的な項目の解説
項目 | 目的・内容 |
---|---|
site-name | Webサイトの正式名称(読みやすさ重視で日本語もOK) |
site-url | サイトのトップページや代表URL(スキーム付き) |
language | サイトの主言語(ISO形式でja , en など) |
license | コンテンツ利用に関するライセンス。CC系や独自ルール(自由記述)も可能 |
llms-guidance | AIクローラーに対するガイドライン。どのような範囲で利用を許可するか/しないかを明示する文章(日本語でもOK) |
✅ コメントの#は『1つだけか否か』問題
llms.txtでは、先頭行の#は「人間向けの説明文(コメント)」として扱われます。
公式のガイドラインで唯一定義されているこのH1記述について改めて確認してみましょう。
“An H1 with the name of the project or site. This is the only required section.”
直訳するならば、「プロジェクトまたはサイトの名前を記載したH1。これは唯一の必須セクションです」ということになります。
つまりH1自体を単一とすべきという訳ではないのですが、従来のマークアップに慣れた方の場合、H1は本来単一記述とすべきでは?という解釈もあり、意見が分かれているようです。
実際のところ、複数のH1を記述しても、今のところ大きな問題にはならなそうですが、AlrightではSEOやHTML構造の文脈に従い、冒頭1行にのみH1を利用することを推奨します。
site-nameなどの行の先頭に付与している##は、H2見出しではなくコメント行(読みやすさのための装飾)として処理されますので、このあたりも臨機応変に記述しましょう。
✅ 柔らかくも明確な「メッセージ型」の仕様
llms.txtは、従来のrobots.txtのような形式的で機械語的なルール指定ではなく、「人間がAIに語りかけるような形式」を採用しています。
そのため、次のようなメッセージも記述可能です。
llms-guidance: 学習には使わないでください。ただし、要約や引用、出典付きリンクなどの非営利的活用は歓迎します。営利目的での利用は許可しません。
この柔軟さはllms.txtの大きな特徴であり、同時に、書き手側の「意図の明確さ」が求められるポイントでもあります。
「禁止」だけでなく、「こう使ってくれるならOK」「この情報はむしろ拡散してもらって構わない」など、AI時代にふさわしい「条件付きOK」の表現ができる点は、これまでにない利点と言えるでしょう。
✅ フォーマットの厳密な定義は「ない」に等しい
現時点でのllms.txtには、W3C的な厳密なスキーマ定義は存在しません。
記述項目の一部はllmstxt.orgに掲載されていますが、それを外れていてもパースできないわけではなく、AIクローラー側がある程度の柔軟性を持って解釈する前提です。
そのため
- 行頭やスペースの微妙なブレ(例::のあとに空白が1つor2つ)
- 項目の順序
- 値が文単位で長くなる(複文)場合
といった軽微なゆらぎには比較的寛容です。
一方で、曖昧な書き方・断片的なメッセージだけでは意図が伝わりにくいため、誤解を避けるにはある程度まとまった記述が推奨されます。
3-2. 特定のクローラーを制御する構文例
llms.txtでは、AIクローラーごとに許可・不許可の方針を細かく設定することも可能です。
これは従来のrobots.txtと似た構文を採用しており、比較的直感的に記述できます。
例えば、OpenAIのクローラー(GPTBot)にはアクセスを許可し、AnthropicのClaudeBotには拒否を示す場合、以下のような記述になります。
## AIクローラーごとの制御設定
User-Agent: GPTBot
Allow: /
User-Agent: ClaudeBot
Disallow: /
✅ User-Agentごとの制御構文のポイント
構文 | 意味 |
---|---|
User-Agent: | 対象となるAIクローラー名を指定 |
Allow: | クローラーに対してアクセスを許可する |
Disallow: | クローラーに対してアクセスを拒否する |
/ | ルートパス(サイト全体)を示す |
- Allow: / … すべてのパスを対象に「OK」
- Disallow: / … すべてのパスに「NG」
✅ 全クローラーを制御したい場合
すべてのAIクローラーに一律のルールを適用したい場合は、以下のようにUser-Agent: * を用いることもできます。
User-Agent: *
Disallow: /
ただし、* はすべてのクローラーを確実にカバーする保証はなく、意図が強い場合は個別指定を推奨します。
✅ 代表的なAIクローラー名(User-Agent)
以下は、主要なAIベンダーが運用しているクローラーとそのUser-Agent一覧です。
特に「学習目的で利用されるかどうか」は、ポリシー設定において重要な判断材料になります。
提供元 | 名称 | 説明 | User-Agent名 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
OpenAI(ChatGPT) | GPTBot | ChatGPTの学習・品質向上のために使用 | GPTBot | 学習・収集 |
OAI-SearchBot | OpenAIによる検索最適化・データ収集用 | OAI-SearchBot | 検索連携 | |
ChatGPT-User | ChatGPTユーザーの参照トラフィック識別用 | ChatGPT-User | 解析・表示補助 | |
Anthropic(Claude) | ClaudeBot | Claudeによる検索・対話時の参照 | ClaudeBot | 検索・対話 |
claude-web | ClaudeがWebページを明示的に読み取る用途 | claude-web | 参照 | |
anthropic-ai | Claudeの事前学習や技術調査目的クローラー | anthropic-ai | 学習 | |
Google(Gemini) | Google-Extended | Geminiなどの機能強化・AI学習に使用 | Google-Extended | 学習 |
Meta(Facebook) | meta-externalagent | AI学習・商品改善用途の公式クローラー | meta-externalagent | 学習・調査 |
meta-externalfetcher | 個別取得用途。robots.txtを無視する可能性あり | meta-externalfetcher | 非制御(注意) | |
Perplexity.ai | PerplexityBot | Perplexityの検索・質問応答のためのクローラー | PerplexityBot | 検索 |
Microsoft(Bing) | BingBot | Bing検索やCopilot連携向け | BingBot | 検索・一部AI学習 |
✅ ユースケース別の注意ポイント
- AIに学習させたくない場合:GPTBotやGoogle-Extended,anthropic-aiなどの学習用途クローラーをDisallow指定
- AI検索結果に出したくない場合:ClaudeBot,PerplexityBotなどの表示系クローラーを制限
- 制御不能なクローラー(例:meta-externalfetcher)に対しては、.htaccessなどサーバーレベルの制御が推奨
✅ 構文の読み取り精度はクローラー次第
llms.txtは、法的拘束力を持つ防御手段ではなく、「意図の表明」に重きが置かれた仕様です。
そのため、たとえDisallowと書いていても、必ずしも全てのクローラーが従うとは限りません。
この点はrobots.txt同様に「お願いベース」である点に変わりなく、制御の効力よりも透明性の確保が主目的と捉えるのが実態に即しています。
llms-guidanceのような自由記述の役割はllms.txtで、クローラーの制御はrobots.txtや.htaccessでという棲み分けが、現時点では手堅い運用体制と言えます。
3-3. クローラーごとの制御とrobots.txtとの併用
前述したように、robots.txtはクローラーに対して強制力のない「お願いベース」の仕組みであり、必ずしも意図どおりにアクセス制御できるとは限りません。
この背景から、「同じ意図をllms.txtにも重ねて書いておこう」という運用が広がり、実際に一定の抑止効果があったという報告も散見されます。
ただ、llms.txtは本来「AIにどう扱ってほしいか」を伝えるためのポリシー文書であり、ユーザーエージェント単位の制御を目的とした設計にはなっていません。
✅ 並走する2つの役割
項目 | llms.txtの役割 | robots.txtの役割 |
---|---|---|
サイトのポリシー・意図の表明 | ◎ 柔らかく、詳細に記述可能 | △ 制御は可能だが、意図の表現には不向き |
AIによる学習/二次利用のガイドライン提示 | ◎ 自由度の高い文章で方針を示せる | × 学習・活用方針までは記述できない |
特定クローラーのアクセスブロック | △ 一部は実質的に機能している例もある | ◎ User-Agent単位で明確に制御可能 |
読ませたいAI・読ませたくないAIの区別 | △ ポリシー文で柔らかく誘導できる | ○ 厳格なクロール制御が可能 |
✅ 過渡期の今、どう設計するか?
AIに積極的に見てほしいのか、コンテンツやインフラを守りたいのか
その立場や目的によって、各ツールを柔軟に使い分けるのが、現時点でのもっとも現実的なアプローチです。
多くのAIクローラーがllms.txtの存在を意識し、アクセス調整を行っている例もある今、「重複してでも明確に意思を伝える」ことは、むしろ有効な戦略といえるでしょう。
✅ ケース1 AIに見て欲しい場合の設計
手法 | 主な役割 |
---|---|
llms.txt | AIに「こういう使い方ならOKです」と、人間の言葉で方針を伝える |
robots.txt | 特定のクローラーにだけ「ここは入らないで」と制御する(読み手を選ぶ) |
## llms.txtの例
llms-guidance: AIによる全文学習は禁止しますが、要約や出典付きの引用などは許可します。
## robots.txtの例
User-Agent: GPTBot
Disallow: /
User-Agent: ClaudeBot
Disallow: /
✅ ケース2 AIから守りたい場合の設計
より厳格に排除したい場合には、以下のような組み合わせで対応するケースもあります。
方法 | 内容例 |
---|---|
llms.txt | 利用を一切禁止する旨を明記し特定User-Agentをすべて拒否 |
robots.txt | 特定User-Agentをすべて拒否 |
.htaccess | IPやUser-Agentによるサーバーレベルでのブロック |
3-4. より詳細な情報を伝える拡張構文
ここまではAIから「守りたい」という視座に立脚した話が中心でしたが、ここからはAIに「伝えたい」という話が中心になります。
基本的に自由記述に近い柔軟な設計を採っているllms.txtですが、実際には多くのサイトで使われ始めたこともあり、ある程度共通化されたフィールドや記述例が登場してきています。
本セクションでは、ポリシー以上の情報を伝えたい場合に用いられる構文例や、その意図、記述時のポイントを紹介します。
✅ よく使われる拡張フィールドの例
項目 | 意味・目的 |
---|---|
author | このファイルまたはサイトの発信者情報(組織名や担当者名) |
tags | サイトやページの主なテーマ・カテゴリ(AI、マーケティングなど) |
license-url | 利用規約やライセンスの詳細を記したページのURL |
sitemap | サイト構造を示すsitemap.xmlなどのURL(AI向けに構造を理解させる意図) |
canonical | 代表URL(ミラーサイトや記事転載がある場合に「本家はこちらです」と伝える) |
contact | 問い合わせ先(特に利用許諾に関する連絡を想定) |
date-modified | 最終更新日(例:2025-06-19。AIに鮮度を意識させる意図) |
✅ 記述例(拡張構文つき)
# llms.txt for AI Alright
## site-name: AI Alright(オールライト)
## site-url: https://www.ai-alright.com/
## language: ja
## author: Alright編集部
## license: CC BY-NC 4.0
## license-url: https://www.ai-alright.com//terms/
## llms-guidance: 本サイトの情報は、非営利目的での引用・要約・出典付きリンクの範囲でのみAIによる利用を許可します。
## sitemap: https://www.ai-alright.com/wp-sitemap.xml
## canonical: https://www.ai-alright.com/
## tags: 生成AI, ChatGPT, 営業DX, マーケティング
## contact: info@ai-alright.com
## date-modified: 2025-06-19
✅ フィールド追加の判断軸
- AIに積極的に読んでもらいたい場合:tags,sitemap,canonicalなどを記述することで「構造的に意味のあるサイトです」と伝えられます。
- 意図的に引用を促したい場合:license-url,llms-guidance,contactなどを明記しておくと、引用元としての扱いが丁寧になります。
- ミラーサイト対策や情報鮮度の明示:canonical,date-modifiedなどで、「どのページがオリジナルか」「情報は最新か」を補足できます。
3-5. サイト種別による情報構造の最適化
llms.txtは、Webサイト全体の構造や主旨をAIに理解させるための文書です。
そのため、AIに適切に「見せる」ためには、サイトの情報構造そのものを明確に記述しておくことが非常に重要です。
Alrightのllms.txtジェネレーターでは「サイト種別プリセット」を設け、業種や用途に応じた情報構造を事前に整備できるようにしています。
✅ コーポレートサイト(会社概要、IR情報、ESG情報)
企業情報を発信するサイトでよくある構成例です。
経営方針や受賞歴、ガバナンスなどをAIに伝えることで、企業姿勢や信頼性を補足的に伝えることができます。
項目名 | URL例 |
---|---|
会社概要 | https://example.com/about |
コーポレートガバナンス | https://example.com/governance |
ESG・SDGs情報 | https://example.com/sustainability |
IR情報 | https://example.com/ir |
経営理念 | https://example.com/philosophy |
会社沿革 | https://example.com/history |
受賞歴・表彰 | https://example.com/awards |
メディア掲載 | https://example.com/media |
✅ リクルートサイト(採用情報、企業文化、福利厚生)
求職者向けサイトでは、職場環境や社員の声などを構造的に記載することで、AIによる要約に有効に働きかけることができます。
項目名 | URLプレースホルダー例 |
---|---|
採用情報 | https://example.com/careers |
企業文化 | https://example.com/culture |
福利厚生 | https://example.com/benefits |
職場環境 | https://example.com/workplace |
研修制度 | https://example.com/training |
ダイバーシティ | https://example.com/diversity |
社員の声 | https://example.com/testimonials |
✅ サービスサイト(製品情報、導入事例、技術仕様)
製品・サービスに関する情報を詳細に記載することで、AIがサービスの特長や対象ユーザーを適切に判断しやすくなります。
項目名 | URLプレースホルダー例 |
---|---|
製品・サービス一覧 | https://example.com/products |
導入事例 | https://example.com/cases |
技術仕様 | https://example.com/specs |
API仕様書 | https://example.com/api |
料金プラン | https://example.com/pricing |
サポート文書 | https://example.com/support |
導入ガイド | https://example.com/integration |
✅ 教育機関(学部情報、入試要項、研究成果)
学校サイトでは学部紹介や研究内容など、構造的な項目名で記述することで、生成AIによる理解の精度が向上します。
項目名 | URLプレースホルダー例 |
---|---|
学部・学科情報 | https://example.com/programs |
入試要項 | https://example.com/admission |
研究活動 | https://example.com/research |
教員情報 | https://example.com/faculty |
キャンパス情報 | https://example.com/campus |
学生生活 | https://example.com/student-life |
学事暦 | https://example.com/calendar |
✅ 医療機関(診療科目、施設案内、医師紹介)
医療系サイトでは、診療項目や予約情報、健康コンテンツがAIにどのように取り扱われるかが重要です。
項目名 | URLプレースホルダー例 |
---|---|
診療科目 | https://example.com/departments |
医師紹介 | https://example.com/doctors |
施設案内 | https://example.com/facilities |
診療内容 | https://example.com/services |
予約案内 | https://example.com/appointment |
救急情報 | https://example.com/emergency |
健康情報 | https://example.com/health |
静的なサイト構造をあらかじめ明示することは、llms.txtの効果を高めるだけでなく、AI検索やAI生成における文脈理解をサポートする要素となります。
3-6. サイトの動的コンテンツ(記事・投稿)情報構造の最適化
llms.txtでは、トップページや会社概要のような「静的な情報」だけでなく、日々更新されるブログ記事やニュース、製品アップデートといった動的な情報も対象に含めることができます。
これらは単体で文脈が読み取りづらいため、タグやカテゴリ、概要文などのメタ情報を含めて構造的に整理することで、生成AIにとって意味のあるコンテンツとして認識されやすくなります。
✅ Alrightでのllms.txt記述例(動的コンテンツ)
## title: 【週間AIトピックまとめ】「AIで調べてAIで選ぶ」検索行動の現在地とその先へ(2025/06/13号)
## url: https://www.ai-alright.com/news/1849/
## excerpt: 生成AIの普及で検索行動が大きく変化。若年層動向や「引用される信頼性」、問い方の変化と変革期における企業の戦略的対応などの記事をピックアップ
## reference-md: https://www.ai-alright.com/llms/weeklynews-20250613.md
## published: 2025-06-13
## modified: 2025-06-13
## title: 【成約率30%増】ChatGPTで競合分析強化!データで導く勝ち筋戦略
## url: https://www.ai-alright.com/articles/868/
## excerpt: ChatGPTを活用した競合分析で成約率30%向上!データに基づく差別化戦略と業界別活用法を解説。実践的プロンプト例で営業力を強化しよう!
## reference-md: https://www.ai-alright.com/llms/chatgpt-competitive-advantage-strategy.md
## tags: ChatGPT, GoogleAppsScript, Googleスプレッドシート, IT・SaaS, OpenAI API, オートメーション, コミュニケーション・表現, ターゲティング, データ活用・DX, プレゼンテーション, リードクオリフィケーション, リサーチ・分析, 不動産, 小売・EC, 応用, 最適化, 業務効率・最適化・組織力, 製造業
## published: 2025-06-12
## modified: 2025-06-12
上記は、「Alright」上で日々更新される動的な記事情報を、llms.txtで構造的に記述した例です。
タイトル、URL、抜粋文(excerpt)、関連Markdown(reference-md)、タグ、公開日・更新日といった要素を含めることで、AIクローラーが「どんな目的で書かれた記事なのか」「どのような文脈・領域に属しているのか」を把握しやすくなります。
✅ 運用を支えるツール・CMSとの連携
このような記述は、WordPressなどのCMS側で自動生成できるように設定することも可能です。
Alrightのllms.txtジェネレーターと組み合わせて活用してみましょう。
- SEO系プラグイン(All in One SEO、Yoastなど)をカスタマイズし、llms.txt向けに出力
- カスタム投稿タイプのデータから、sitespeak.aiやwritesonicを利用し一次バッチでllms.txtを生成
✅ 動的情報の構造化が「AI時代のSEO」の核心に
検索エンジンの順位対策という意味での狭義のSEOは、今後「生成AIに対する最適化」=LLMO(大規模言語モデル最適化)へと重心が移っていく可能性が高いと思われます。
そのときに重要となるのが、「構造を持った情報がAIにとって信頼できる情報源として扱われる」ということです。
HTMLやCSS、JavaScriptといった人に魅せることに重きが置かれていた構文を、より構造化された構文に置き換える必要が生じます。
llms.txtは、そうしたAIが意味を読み取れるように構造を明示するための、最初の設計図になりえる可能性を秘めています。
4. llms.txtが示す「次世代Web」の設計原理とは?
llms.txtは、AI向けにWebサイトの意図やポリシーを伝えるための新しい仕組みです。
しかしその本質は、単なるテキストファイルにとどまりません。
そこには、「人が読む前にAIが読む」という、Webとの新しい向き合い方が込められています。
本セクションでは、llms.txtを通して見えてくる、AI時代に求められる情報設計の視点を整理してみましょう。
4-1. 「人が読む前にAIが読む」そして「AIと会話が続く」時代に
従来のSEOでは、「検索してきた人に情報を届ける」ことが第一の目的でした。
もちろんその裏側には、Googleのアルゴリズムに読まれやすくするための工夫もありましたが、それでも最終的には「人間の目で見て、比較して、選ぶ」というプロセスが残されていました。
しかし、AI検索の時代にはその構造自体が変わろうとしています。
ChatGPTやClaudeのようなAIは、検索結果を一覧で提示するのではなく、会話の中で情報を集め、再構成し、「提案」として返すというスタイルを取ります。
ユーザーはリンク先を逐一チェックすることなく、AIが構造化された情報をもとに生成した答えを、そのまま信じて受け取ります。
つまり、判断に至るよりも前に、AIが情報を読んで、選別し、並べ替えているのです。
このとき、AIにとって読みやすい構造で情報が提供されているかどうかは、「提示されるかどうか」「判断材料として使われるかどうか」を左右する大きな分岐点になります。
4-2. AIが「情報をデザイン」するということ
これまでのWebデザインやコンテンツ設計は、人間がスクロールし、比較し、納得するための「情報の配置」を考えるものでした。
価格表や導入事例、レビュー、FAQ…。
それらは「人が読んで判断する」ための設計だったのです。
けれど、AIは違います。
AIは、ユーザーの趣味や価値観、当日の気分までも把握しながら、会話の中で「その人のための答え」を組み立てていくのです。
たとえば旅行を計画するとき、AIは宿の価格や空き状況だけでなく、「どんな体験になりそうか」「どの順で巡れば負担が少ないか」といった「行程としての提案」を会話を通じて提示してくれます。
そしてそこには、私が好むであろう写真や、気に入りそうなレビュー、過去に高評価をつけた類似の場所などが、まるで「しおり」のように自然に挿し込まれているのです。
こうした時代に求められるのは、AIがその「しおり」を組み立てやすいように、情報をあらかじめ整えておくという発想です。
構造、粒度、意図。
それらが明確に整理されていることが、AIにとっての「読みやすさ」となり、結果として「提案されるかどうか」を左右していきます。
4-3. 情報が「生きる」とはどういうことか
llms.txtは、ただのクローラー制御ファイルではありません。
そこに記述された一つひとつの情報は、構造化され、意味づけられ、AIにとって「読める」ものになります。
それは、単なる公開情報から、「判断され、再構成され、提案されうる情報」へと変化するということです。
かつてWebは、「人が検索し、比較し、選ぶ」ための場でした。
しかし今、AIが読み、咀嚼し、推薦し、人が受け取るという流れに変わろうとしています。
この流れのなかで、情報が「生きる」とはどういうことか。
それは、以下のような状態を指します。
- ただ置かれているのではなく、意味を持って取り扱われている
- 単体ではなく、他の情報と組み合わされ、文脈を持って提示されている
- 人が見る前からAIに読まれ、判断材料として活用されている
構造化された情報は、もはや「ページの中だけの存在」ではなくなります。
AIの検索結果、AIのレコメンド、AIによる要約や分析の中で、新たな形で「引用」され、「組み立て直される」デザイン素材となるのです。
そして、これこそがllms.txtの本質です。
情報を「届ける」のではなく、情報を「動かす」という設計。
AIが先に読む時代において、私たちは「伝えたい情報を、伝わるようにする」だけでは足りません。
「AIが扱えるように整え、AIに判断材料として選ばれる」ことが、情報の寿命を延ばし、生きたものにしていくのです。