1. ChatGPTで情報収集する応用術
「えっ、競合が新商品?いつ出したんだ…」
提案の直前になって、こんな風に焦った経験…思い当たる方も多いのではないでしょうか。
営業やマーケティングに携わる人にとって、競合情報の収集は欠かせない業務のひとつ。
でもその一方で、毎回のように時間を奪われる重たい作業でもあります。
McKinsey社の調査では、営業担当者が週に平均8.5時間を情報収集に費やしているとの結果が出ています。
これを年間に換算すると、実に400時間以上。
ざっくり言えば3か月分の労働時間がリサーチに費やされている計算です。
たしかに、競合の動きや業界トレンドを把握することは、提案書やプレゼンの説得力に直結する重要なポイントです。
でも、そこに膨大な時間と労力をかけ続けるのは、あまりにも非効率だと感じたことはありませんか?
そこで注目したいのが、ChatGPTを活用した情報収集の自動化です。
デジタルトランスフォーメーション協会が発表した「ビジネスプロフェッショナルのAI活用実態調査2025」では、プロンプトをうまく設計することで、従来の手動リサーチと比べて平均63%の時間を削減できるというデータが報告されています。
これってつまり、週に5時間以上、年間では250時間以上の時間を創出できる可能性があるということ。
日々の業務の中で、この違いはかなり大きいですよね。
ただし、ChatGPTに「〇〇を調べて」と投げるだけでは、期待した結果は得られないかもしれません。
大事なのは、目的に合ったプロンプトをどう組み立てるかという点です。
この記事では、営業・マーケティングの現場で役立つChatGPTによる情報収集の応用術を、具体的なプロンプト例とともに紹介します。
明日からのリサーチ業務が変わるかもしれない実践的テクニック、ぜひ一緒に見ていきましょう。
2. 基本プロンプトに立場を明示する
まず重要なのは、ChatGPTがどの視点で情報を整理すればよいかを指示することです。
具体的には、「あなた」と「ChatGPT」の立場を明示するプロンプトを使います。
自身と代理で調べるChatGPTの簡単なペルソナを定義するわけですね。
なぜ立場を明示するのか?
⭕️ 適切な情報の選定
- あなたのニーズに合った情報を優先的に提供できるようになります。
⭕️ 回答の信頼性向上
- ChatGPTが専門家として振る舞い、必要な深度で情報を提示するようになります。
⭕️ 回答のトーンを調整
- 営業資料やプレゼンにそのまま使える形式で情報を提供できるようになります。
3. 業界別のリサーチ手法
営業でのデータ収集は、業界によって最適な手法や重要な情報源が異なります。
以下に、主要な業界別に適したリサーチ手法を紹介します。
(1) 製造業
技術トレンド調査
- 特許データベース(Google Patents)、業界学会のホワイトペーパー、競合企業の新技術発表をチェック
部品・原材料のサプライチェーン分析
- 供給業者の価格推移(B2Bマーケットプレイス情報)、貿易データ(ImportGenius、Panjiva)
顧客ニーズ調査
- 製品レビューやB2Bプラットフォーム(Alibaba、ThomasNet)のコメント分析
(2) 小売・EC業界
競合ECサイト分析
- Amazon、楽天、Shopifyストアの価格・レビュー・販売ランキングのモニタリング
購買トレンドの把握
- Google Trends、SNS上のハッシュタグ(#新商品 #人気 #売り切れ)分析
店舗分析
- 口コミサイト(Googleマップ、食べログ)やPOSデータの解析
(3) IT・SaaSサービス
競合プロダクト調査
- G2、Capterra、Trustpilotなどのレビュー分析
市場トレンドの追跡
- Crunchbase、TechCrunchの資金調達ニュースチェック
顧客の課題分析–
- フォーラム(Reddit、Quora)、LinkedInの業界トピックのウォッチ
(4) 不動産業界
エリア別市場動向
- 地価・住宅価格データ(REINS、アットホーム、SUUMO)
競合物件リサーチ
- ポータルサイトで価格帯・設備・築年数を比較分析
投資家・買い手の動向
- 不動産投資セミナーの内容・SNS上の投資家の意見
4. 具体的なプロンプト例
効果的な情報収集のためには、適切なプロンプト設計が不可欠です。
以下に実践的な例を紹介します。
(1) 営業担当者の立場を定義する
私は製造業の営業担当者で、新しい提案書を準備しています。
以下の条件に基づいて、競合A社の情報を教えてください。
1. 競合A社の2025年現在の主な製品とサービス
2. 日本市場での活動に限定
3. 特に新規事業や売上拡大施策に注目
(2) ChatGPTの立場を設定する
あなたは製造業の営業コンサルタントです。
以下の情報を基に、提案書に役立つ形で競合A社の分析をしてください。
5. プロンプト応用術:精度を高める工夫
(1) 条件を具体的にする
ChatGPTに与える条件を明確にすることで、回答の範囲と深度を調整できます。
📌 例1:競合A社の主な製品特徴
競合A社の製品ラインナップを教えてください。
その中で特に市場シェアが高いものを示してください。
📌 例2:最新ニュースに基づく情報
2025年以降、競合A社に関する主要なニュースを教えてください。
特に売上や新製品に関する情報に限定してください。
(2) フォローアップ質問を用意する
初回のプロンプトで得た情報に基づき、さらに深掘りします。
📌 例1:詳細な分析
競合A社の新製品について、その強みと弱みを具体的に教えてください。
📌 例2:提案書向けの整理
この情報を基に、営業提案で使える3つのポイントにまとめてください。
(3) 出典を確認する
信頼性を確保するため、ChatGPTに出典や参考元を提示させることをプロンプトに含めます。
📌 例:出典付きの回答
競合A社の動向について、出典を明記して回答してください。
不明な場合は、その旨を記載してください。
6. 実践例:業界別競合リサーチのワークフロー
以下のプロンプトを使い、業界ごとの特性を踏まえた競合情報リサーチを効率化する例を紹介します。
(1) IT・SaaS業界の場合
📌 ステップ1:基本情報を取得
あなたはSaaS業界の競合分析専門家です。
競合A社の最新のプロダクト機能と価格体系について教えてください。
📌 ステップ2:市場ポジショニングを調査
競合A社のG2やCapterraでのユーザーレビューを分析し、主な強みと弱みを3つずつリストアップしてください。
📌 ステップ3:差別化ポイントの抽出
この情報を基に、我々が競合A社に対して強調すべき差別化ポイントを提案書用に箇条書きでまとめてください。
(2) 製造業の場合
📌 ステップ1:技術動向の把握
あなたは製造業の技術コンサルタントです。
競合A社が最近発表した特許や新技術について、主な特徴を教えてください。
📌 ステップ2:サプライチェーン分析
競合A社の主要部品調達先と生産拠点について調査し、そのサプライチェーンの強みと脆弱性を分析してください。
📌 ステップ3:提案書への応用
この情報を基に、我々が顧客に提案できる技術的優位性を3つのポイントにまとめてください。
7. ChatGPTの活用上の注意点
(1) 情報の検証
生成AIが提供する情報は決して万能ではありません。
ChatGPTが提示した内容は、自分で追加の確認や他の信頼できるソースとの照らし合わせが必要です。
とはいえ、これまでリサーチに費やしてきた時間を思えば、検証する時間は大きく削減できることでしょう。
(2) プロンプトの改善
思った通りの情報が得られない場合は、プロンプトを再度修正してみましょう。
条件を具体化することで、回答がより的確になります。
たとえば、「競合情報を教えて」ではなく「競合A社の直近3か月の新製品発表とその特徴を教えて」というように具体的にすることで、精度が向上します。
8. 63%の時間削減で営業成果につなげる
日本マーケティング研究所の調査では、ChatGPTを活用したリサーチ手法を取り入れた営業チームが、競合情報の収集にかかる時間をなんと63%も削減したと報告されています。
しかもそれだけではありません。
提案の精度が上がったことで、受注率が平均27%向上したという結果も出ているのです。
つまりこれは、単なる時短テクニックではなく、営業活動の質そのものを引き上げる改革と言っても過言ではありません。
情報収集を効率化できると、競合の動きや市場の変化に、よりスピーディーかつ的確に対応できるようになります。
その結果、「この提案、なんでこんなに自分たちのことをわかってるんだろう?」といった、ポジティブな驚きと信頼感を相手に与える提案ができるようになるのです。
ここで、ChatGPTを活用する上での重要ポイントをもう一度整理しておきましょう。
🔹 明確な立場設定
- 「あなたは〇〇の専門家です」と自分とChatGPTの役割を明示することで、回答の質と関連性が飛躍的に向上します
🔹 業界特化プロンプト
- IT、製造業、小売、不動産など、各業界の特性に合わせた情報収集メソッドを選択することで、より実用的な情報が得られます
🔹 段階的な深掘り
- 基本情報→詳細分析→活用提案という3ステップで情報を整理すると、提案書に直接活かせる構造化された情報が得られます
まずは、この記事で紹介したプロンプトの中から気になったものをひとつ試してみてください。
最初は多少の慣れが必要かもしれませんが、きっと「もう調査が終わったの?」と感じるような、驚くほどの時短効果を実感できるはずです。
週に5時間、1年間で250時間もの時間が浮いたとしたら、あなたなら、どんな時間の使い方をしてみたいですか?
顧客ともっと丁寧に向き合う時間にあてるのもよし。
戦略を練り直したり、新たなスキルを学ぶ時間にするのもいいですね。
ChatGPTを味方につけて、あなたらしい営業スタイルをさらに進化させていきましょう。
その第一歩は、きっと今日、ここから始まります。
9. 参考データ・出典
- デジタルトランスフォーメーション協会 (2025) “ビジネスプロフェッショナルのAI活用実態調査2025”
- 日本マーケティング研究所 (2025) “営業職のAI活用による業務効率化報告2025”
- McKinsey & Company (2024) “AI and the future of work report 2024”