「AI検索」が変えるのは手段だけなのか?『問い方』そのものが変わりはじめている
生成AIの進化が「検索」という行動そのものを再定義しつつあります。
そして最近になって、国内でもAIを利用した検索に関する調査レポートが相次いで公開されはじめました。
今週は、検索行動の変容・ユーザーの心理・企業の対応策に関する3つの考察を取り上げながら、あえて1つの問いを掘り下げてみます。
ずばり今回のテーマは『検索とは、何をすることなのか?』です。
1. 生成AIで「調べる・選ぶ」若年層の姿
まず注目すべきは、若年層を中心に「AIに聞く」という検索行動が急速に広がっている点です。
株式会社メディアリーチの調査では、10〜30代の約3割が生成AIを活用して商品・サービス・企業の比較検討を行っており、その約半数がAIだけで意思決定を完結させた経験があると答えています。
一方で、SNSやレビュー、公式サイトなどと組み合わせる「多層的な探索行動」も同時に進行しています。
新しい技術の利用は常に若年層から始まり、いずれ他世代にも波及していく。
そんな構造が、ここにも見て取れます。
参考:株式会社メディアリーチ 『若年層の生成AI利用者の約3割が、生成AIで「商品・サービス・企業」を検索・比較 ー 「AIで選ぶ」新しい検索行動が拡大』より
2. 引用されたサイトは「信頼できる」と感じる時代
次に、PLAN-Bによる生成AIユーザー調査では、AIに引用された情報源に対する信頼の変化が明らかになりました。
回答者の約6割が、AIの提示した引用元を訪問。
さらにそのうちの約4割が「信頼性が高まった」と感じているという結果です。
出典が明示されない場合は、従来の検索エンジンで裏取りを行うなど、AI検索と従来検索のハイブリッド活用も日常化しています。
いま、AIによる「引用」は、単なる参考表示ではなく、『推薦』に近い意味合いを持ち始めているのです。
参考:株式会社PLAN-B 『【調査】6割が生成AIに引用されたサイトを訪問、4割が信頼度向上を実感|AIに“引用される”とユーザーの意識・行動はどう変わる?』より
3. 「ググる」は死なないが、問いの質は問われる
Forbes JAPANの特集では、「AIに置き換わるGoogle検索」の論点を一段掘り下げ、「人間の問いの力そのものが問われている」と強調しています。
著者の清田陽司氏は、「検索とは情報を得る手段ではなく、問いを耕すための営みである」と指摘しています。
思考を深めるために検索し、問いを育てていく。
そうした知的なプロセスが、生成AI時代にも引き継がれるべきだと説きます。
参考:Forbes JAPAN 編集部 『「ググる」は本当に死ぬのか? 生成AI時代に活きるGoogle検索を考える』より
編集後記:変わるのは「ツール」だけじゃない。「問い方」そのものだ
3つの調査から見えてくるのは、検索行動の変化だけではありません。
私たちが何気なく『調べる』そのときの『問い方』自体が変わりはじめているという事実です。
たとえば、Googleであれば「AI 営業 ナーチャリング」などのキーワードを並べて検索するのが当たり前でした。
一方でChatGPTに対して、そんな聞き方をする人は少ないでしょう。
「最近、営業部門でAIを使ったナーチャリングの事例を探していて…」
「自社で使えそうな方法ってありますか?」
こうした会話ベースの、より文脈を含んだ問いが、いま新しい『検索のカタチ』になりつつあります。
このように、検索は『ツールの違い』ではなく『言語行動の違い』として捉え直す必要があるのではないでしょうか。
音声入力やマルチモーダルな検索が進化していく中で、AIへの問いはさらに口語的になり、属人的になり、『その人らしさ』を含んだ検索へと向かっていきます。
そして、その問いに対してAIが返す答えも、より文脈に寄り添ったものへと進化していく。
この変革期に重要視すべき点は、単に「検索で出てくるか」ではなく、「検索にどう問われ、どう答える存在か」という視点ではないでしょうか。